それは「性的視線」というよりも、「異性をモノ扱いする視線」ではないかと思った
昨日の記事の続き。
昨日の問いかけへの鳥蛇さんの返信によると、「性的視線」は「性的欲情の視線」と「性的侮蔑の視線」を両方含めます、ということらしい。
でも、僕にはその定義はどうしても納得できないんですよ。だって前者は「相手を求める(欲望する)視線」であり、後者は「相手を拒絶する(欲望の対象外にする)視線」だから。根っこもベクトルも正反対なこのふたつを「同じもの」として扱うのは、どう考えても無理があると思うんです。たぶん、鳥蛇さんが言いたいのも、こういうこととは違うんじゃないか?
で、なんとか別の解釈はできないかと思って、いろんなトコロの鳥蛇さんの発言をや記事を読み返して、なんとなくわかった気がするんですが……鳥蛇さんが言う「性的視線」とは、ひょっとして「異性をモノ・商品扱いする視線」*1のことですか?たとえば、「メガネ男子萌え」「男のカネや名声目当ての女」というような。
もしそうだとしたら、「性的視線には、侮蔑の視線も含む」という鳥蛇さんの言葉も理解できるし*2、鳥蛇さんの記事で、僕にはうまく理解できなかった箇所もスッキリするですけど。たとえば、↓の部分。
http://d.hatena.ne.jp/crowserpent/20061022
「電車男」が個人的なお話に留まっているうちは良かったものの、ヒット作として普及することで、オタク男性への性的視線が正当化・可視化されてしまったんですね。本田透氏が「電車男」を否定し「護身」を唱えたことには、このような背景があります。
確かに電車男のヒットにより、オタク男が「萌え」の対象にされるようになってきています。そしてそれを「モテの魔の手」と言い、本田透が「護身」したという話もわかります。本田氏は、「『電波男』がヒットしたら、金や名声目当ての醜い女が寄ってくる!モテの魔の手だ!護身しる!!」と言ってましたもんね。
ただコレは、「異性の欲望」を恐怖しているという点は同じでも「性的視線」を恐怖しているわけではないと思うんですよ。鳥蛇さんの記事の伝わりづらさは、「性的欲望」と「それ以外の欲望」を混同し、「性的視線」と表現しているところにあったと思うのですが、いかがでしょう?
僕は「性的視線」と聞いて、「犯してぇ〜」「犯されてぇ〜」というような、生理的な欲望だけを思い浮かべました。だから、「オタク男が『性的視線』の対象にされているとしたら、もっとセックス対象としてエロい眼で女性から見られるようになっているハズだ(イケメンのように)。でも、実際には相変わらずキモがられてるじゃん」と思い、鳥蛇さんの記事に違和感を感じたわけです。
つまり、「性的視線」について、
- 性的欲情の視線:相手を求める(欲望する)視線
- 性的侮蔑の視線:相手を拒絶する(欲望の対象外にする)視線
- 異性をモノ扱いする視線:欲望する視線かつ、ときに侮蔑を含む場合もある視線
という3通りの解釈があって、おおまかに言って僕は1番と解釈し(その後で2番も含むのかな?と思った)、鳥蛇さんは最初から3番のつもりだった、ということだと推測しました。
まとめると、こういうことです。
名前 | 具体例 | 嫌悪感の傾向 | 欲望が性的/性的でない |
性的欲情の視線 | 「犯してぇ〜」・「犯されてぇ〜」 | 男は喜び、女は嫌がる | 性的 |
性的侮蔑の視線 | 「キモい」・「この大根足」・「ちんこちいせーな」 | 男も女も嫌がる | 性的 |
異性をモノ扱いする視線 | 「メガネ男子萌え」・「おっぱい星人」・「金・名声目当ての恋愛」・「顔・体目当ての恋愛」 | 男も女も嫌がる | 性的な場合と性的でない場合がある |
↓の文章なんかも、「性的視線」を「異性からモノ扱いされる視線」に読み換えれば、僕も半分くらい同意なんですけどね……
http://d.hatena.ne.jp/crowserpent/20061022
「非モテ」を「性的欲望の対象にならないことの問題」と捉える議論をよく見かけますが、これは誤りです。「非モテ」は性的視線に晒されることの問題なんです。
以上、僕にも納得できるように「性的視線」を「異性をモノ扱いする視線」に読み換えてみました。もしこれも見当違いで、「いや、男もセックス対象とされることそのもの(1番の『性的欲情の視線』)に恐怖感を感じていて、Masaoさんや非モテはそれを自覚していないだけだ」と言われたら……
「自覚できていないものについてはなにも語れないし、恐怖も感じません。だから問題にもなりません」と僕は答えます。誰も自覚していなくて語られてもいない恐怖を、「自覚していないだけです」と言って存在することにしてしまうのは、無理があると思いませんか?逆に「鳥蛇さん自身は、1番の視線に恐怖を感じるの?」と聞いてみたいですね。
【蛇足】
表では簡単にまとめるために、「異性をモノ扱いする視線」は「男も女も嫌がる」と書きましたが、ここにも男女差はあると思います。性的対象とするような「性的モノ化」については女性がより強く嫌悪し、富や名声を狙うような「社会的モノ化」については男性がより強く嫌悪する、というような。これは、男女が商品として「持っている」モノが違うからでしょうが、それだけでもないと思います。そもそもなぜそのように「商品化」されたのか?という。