世界のはて

『はてな非モテ論壇』の一角だった場所

「超ライトオタク」が流入してきたとしても、既存のオタク文化とは住み分けが行われるだけ


これは違うと思う。ひとことで言えば、「ジブリが国民的にメジャー化して、id:p_shirokumaさんが言うように萌えオタの居心地が悪くなるような現象が、何か起こりましたか?」ということなんだけど。

ライトオタクがオタク文化に大量に流入してきたからといって、オタク文化すべてが影響を受けるとは、考えにくい。マンガや小説を見れば分かるけど、

A.非オタ向け:ジャンプ、新潮文庫
B.オタ向け:ガンガン、ライトノベル
C.ポルノ:快楽天、2次元ドリーム文庫

といった感じで、住み分けが行われている。これらの層は、市場的にも文化的にもお互いが独立しているので、「Aが増えたからBが減る」「ライトオタが増えたから、ポルノコンテンツが減る」ということは、あまり考えられない。作り手も受け手も、それぞれ別のニッチを相手にしており、食い合いは起こらないから。

他の文化圏との相対評価の促進や、ライトオタクの増大が進めば、「口当たりの良い」、つまり、キャッチーなコンテンツに人気が集まると同時に、キャッチーではない作品・ライトオタクにはついていけないような作品は、メインストリームから外れていくと予想される。『ハルヒ』『東方』『ガンダム』のような作品が人気を博するのとは対照的に、エロ度の高い幼女コンテンツや、コンプレックスの塊のような男性主人公が美少女ハーレムに耽溺するようなコンテンツは、ライトオタク達への受けの悪さや他文化圏との相対比較者への受けの悪さから、敬遠されるようになるだろう。ライトな消費者にはドン引きされそうな“癖のあるコンテンツ”は、市場淘汰のもと、少なくなってくるのではないだろうか。

id:p_shirokumaさんは言うけれど、そもそもジャンプを買うような「ライトな」消費者層からは「エロ度の高い幼女コンテンツや、コンプレックスの塊のような男性主人公が美少女ハーレムに耽溺するようなコンテンツは、ライトオタク達への受けの悪さや他文化圏との相対比較者への受けの悪さから、敬遠」され続けてきた。昔から。

それでもジャンプと2次元ドリームマガジンが同時にオタク文化の中で生き残っているのは、それぞれの消費者層、あるいは消費スタイルが被っていないから。同じ「ジャンプを買う人」でも男子中学生と腐女子は別レイヤーといった感じで。

同じ「オタク文化」と括られていても、その消費者層は細分化されており、オタク文化の主流は常に「ライト層」を狙ったジャンプだった。そうした層からは「エロ/萌えコンテンツ」は常に敬遠され続けてきたけれど、「エロ/萌えコンテンツ」もまた主流とは別のレイヤーとして生き延びてきた*1

今「ライトオタクの拡大」と言われているものは、主に「B層を受容する人間」が増えていることを指すと思うのだけれど、たとえB層が拡大したとしても、C層はC層で、別のトライブとして生き残っていくんじゃなかろうか。歴史を踏まえたうえで考えると。


また、id:p_shirokumaさんは

古いオタクは、自分達の安住の地を失う。ライトオタクの流入によって、コミュニケーションの問題に直面させられるからだ。

とも言うけれど、そもそも全てのオタクが「オタクである」という理由で同じコミュニティに所属しているわけではない。仮に、最近「DENPA!」等で話題のクラブノリの「超ライトオタク」達がオタク文化に参入してきたとしても、恐らくそうした人種と既存のオタクは別のコミュニティを形成し、それぞれのトライブに最適化された別のコンテンツが産み出され、住み分けが行われることになると思う。


ただ心配なのは、こうした違うノリの文化が、近い場所のコンテンツを消費し合うことで、優越感ゲームが加速するかも知れないということ。かつて、新人類が「ダサいインドア派」「ネクラのインドア派」を貶めることで「インドア派」内での差別化を図ろうとしたように、一方のオタク達が、もう一方のオタク達を貶めるような現象が起きる可能性はある。

そのとき、「ライトオタク」「古いオタク」のいずれかは、最早「オタク」とは呼ばれずに何か別の名を与えられ、あたかも違う人種であるかのように扱われるようになるのかも知れない。

【↓つづく】
「超ライトオタク」は、オタク文化に流入してきているのではない。オタク文化を自分の文化に持ち帰っている

*1:ネットばかり見ていると、エロ/萌えが主流だと誤解しそうになるけど。