世界のはて

『はてな非モテ論壇』の一角だった場所

事象および影響

前項のごとく、ラブハラスメントは常に構造として存在しているものと言えるが、はっきりとした加害・被害の構図が浮き彫りになるのは、主に比較的若い世代における、酒席などを中心とした場である。これらの世代における最大の関心事である恋愛及び性の話題は、既にその経験の多寡などによって世代内の各人に優越感・劣等感をもたらしており*1、従って意識の中で彼らは「勝ち組」「負け組」に二極分化されている。
この「勝ち組」が酒席などの場において、「負け組」が望んでも得られぬような話題、あるいは耳にしたくもないような露骨な話題を持ち出すというのは比較的よく見られる状況であるが、このことは「負け組」の少なくとも一部にとっては多大な苦痛をもたらすものであり、彼我の格差に悲嘆した彼らは、自らの容貌や外見、生育環境や人格などに関して、多くの場合不要な劣等感をさらに上積みする結果となってしまう。過去の心的外傷(Trauma) などと結合して、精神疾患発病、自殺といった最悪の結末をもたらすことすら皆無ではない。
このような結果はおそらく「勝ち組」の者の予測を大幅に超えたものであり、また「勝ち組」の者は自らの言動が加害行為であることを認識してすらいないことも多いと思われるが、彼らが「恋愛ほど素晴らしいものはない」「誰でも努力次第で恋愛はできる」*2という価値観を信じて疑わない限り、何らかの責めを負うべきことは避けられまい。殊に後者の「誰でも努力次第で恋愛はできる」という命題は、言い換えれば「恋愛ができない者は努力が足りない」ということになり、「負け組」の苦悩の責めを「負け組」の当事者に押しつけて二重の責め苦を負わせていることになるからである。
実際問題として、いかに努力しても恋愛が不可能な者は存在するのであって*3、また一般に「努力で克服できぬ困難など存在しない」というのは最もありふれた欺瞞の一つであるのだが、どういう訳かこの件に関してはこのことを疑わぬ者が余りにも多いのである。なお、ラブハラスメントの別の形態として、「勝ち組」の側に立つ加害者が「負け組」の側に立つ被害者に侮辱を加える手段として恋愛・性に関する話題を用いるというものもあるが、これは従来のセクシャルハラスメントあるいはモラルハラスメントの一形態として説明できよう。

*1:各種メディアがこのような序列意識を煽るという問題も大きい。「日本の童貞」などを参照。

*2:驚くべきことに、何らかのきっかけで「負け組」から「勝ち組」に転じた者の中にも、このような命題を主張する者が存在する。一例としては、「ずっと彼女がいないあなたへ」など。

*3:もてない男」「恋愛の超克」「帰ってきたもてない男」などを参照。